『7月4日に生まれて』(しちがつよっかにうまれて、原題: Born on the Fourth of July)は、1989年制作のアメリカ映画。ロン・コーヴィックの同名の自伝的小説(1976年)を映画化した作品で、ベトナム戦争を扱った戦争映画。オリバー・ストーン監督。
主演のトム・クルーズは役作りのため、約1年間車椅子に乗って生活した。
第62回アカデミー賞で8部門にノミネートされ、監督賞、編集賞の2部門を受賞している。
1989年公開のベトナム戦争の真実を描いたヒューマンドラマ。
「トム・クルーズ」主演の映画にしては、非常に重いテーマの作品となっている。
■あらすじ
1957年、ロン(ロニー)は、ニューヨーク・ヤンキースが好きな普通の少年だった。彼の誕生日である7月4日、アメリカ独立記念日である。1960年、家族でジョン・F・ケネディ大統領の就任式をテレビで見たロンは、自由主義を守るために自己犠牲を尊ぶ演説に強い印象を受ける。また母親は「ロンがいつか大統領のように立派な演説をする日が来る」と夢見るのだった。
1962年、ガールフレンドのドナを初め、幼馴染とともに地元のハイスクールに進学したロンは、レスリングに熱中し、トップに立つため厳しいトレーニングや減量を課していた。しかし努力は実らず、試合で敗北してしまう。しばらく後、学校で行われた海兵隊のリクルーターによる説明に、ロンは強く惹かれる。キューバ危機に、ベトナム戦争と緊迫した情勢の中、愛国心に駆られたロンやティミーは友人の制止を無視し、アメリカ軍への入隊を決心する。ロンはドナをプロム(卒業パーティー)へと誘えないまま、入隊準備を口実にパーティーを欠席する。その夜、安全な任地を望む父親に対し、前線に行くことで国に貢献したいとロンは語り、母親もそれを肯定する。ロンは神に祈りを捧げると、意を決してパーティー会場に向かい、ドナと踊り甘美なキスを交わす。
1967年、海兵隊に入隊したロンはベトナム戦争に従軍し、今はウィルソンを初めとする複数の部下を持つ軍曹となった。熾烈な戦いの中、誤って乳児を含む民間人を殺めたことにショックを受たロンは、さらにベトコンの攻撃を受けてパニックを起こし、ウィルソンをも誤射して死なせてしまう。その夜、ロンは上官に誤射を告白するが、勘違いだと強く否定される。1968年1月、劣勢の中、遂にロン自身も踵を撃たれ、立ち上がったところでさらに銃弾に倒れる。野戦病院も大混乱で、医師の治療を待つ間、ロンは従軍牧師の祝福を受け、意識を失う。
トム・クルーズは役作りのために、1年間も車椅子で生活したとのこと。
「主演男優賞」を受賞してもいいぐらい、力のこもった熱演だったと思います。
障害を背負ってしまった後の苦悩や葛藤、心情の変化を痛いほど克明に演じ切っている。
この作品で、役者としても一皮剥けたと言えるのではないでしょうか?
トム・クルーズ演じる「ロン」は、アメリカ独立記念日である7月4日に生まれた。
愛国心に燃えるロンは、社会主義と闘わなければアメリカの未来はないと、海兵隊に志願しベトナム戦争に参加する。
戦地へ行く日を前に、幼馴染みで片想いの「ドナ」を卒業パーティーに誘えなかったロンだったが、雨の中、ずぶ濡れになりながら会場へ走り、意を決してドナとダンスするのであった。
ベトナムでの野戦が、悲惨で陰鬱な地獄のような惨状で、ロンも焦りと混乱の中、民間人のベトナム人の妊婦や赤ちゃんを殺してしまったり、誤って同僚を撃ってしまったりしてしまう。
自身も銃弾に倒れ、脊髄を損傷してしまい、下半身麻痺の状態になってしまう。
戦地から戻ってきたロンであったが、そこからは、己の未来に何も希望が持てなくなり、自暴自棄の生活を送るように、、、
堕ちていく様がすさまじくて、見ているのがつらいぐらいのシーンの連続でしたね。
メキシコに渡り、酒やドラッグ、商売女とのセックスに溺れる日々、、、
ちょうど時代は、「ヒッピー文化」や「ラブ&ピース」の空気に満ちてきており、ロンもベトナム戦争の意義を疑い始める。
義憤に駆られて参加した戦争は一体何だったのか?多くの若者の犠牲を生んだだけではなかったのか?、、、と。
同僚の「ウィルソン」を誤って撃ち殺してしまったという十字架を背負い、ずっと苦しんでいたロンは、ついにウィルソンの両親、妻子の元を訪れ、慟哭しながら真実を打ち明けるのであった。
両親も妻もロンを責める事はなかった。「お前もずっとつらかっただろう、、、この戦争が間違っているのだ、、、」と。
やがて、大学運動に参加していたドナと再会したロンは、反戦デモに身を投じ、戦争反対運動に傾倒していくのだった。
この作品は、「グッドモーニングベトナム」とは対極的なベトナム戦争の真実を、重いテーマで描き切っている作品と言えますね。